芽は出たのに、茎が細い・長い・倒れやすい。そんな苗に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。まずは今回、実際に徒長してしまった苗の様子をご覧ください。
一見すると、細く長く伸びているので順調に育っているようにも見えます。しかし徒長した苗は茎が弱く、倒れたり傷んだりしやすいため、できれば避けたい状態です。
7月下旬に種をまいた水菜・小松菜・ブロッコリーが、ほぼすべて芽や茎がひょろひょろと細長く伸びてしまいました。過去に育てたラディッシュでも同じような状態になったことがあり、原因を調べてみると、「徒長(とちょう)」と呼ばれる症状だとわかりました。
芽や苗がひょろひょろ、茎が細い「徒長」とは?
こちらは水菜が徒長している様子です。

「徒長(とちょう)」とは、植物の茎や節間などが通常よりも細く長く伸びてしまう状態のことです。
種をまいたあと、芽は出たものの「茎が細くてひょろひょろしている」「背丈ばかり伸びて倒れそう」と感じる場合は、徒長している可能性があります。
発芽直後の苗では、双葉より下にある幼軸(ようじく)という部分が必要以上に長く伸び、株元がぐらついたり、苗が横に倒れたりすることがあります。
徒長した苗は、一見すると背が高くなって順調に成長しているようにも見えます。
しかし、丈夫な苗は単に背が高い苗ではなく、茎がしっかりしていて、葉と葉の間隔が詰まった、がっしりした姿をしています。
なお、茎が細いというだけで、必ず徒長とは限りません。
肥料不足や根の傷みなど、別の原因で生育が弱くなっていることもあります。
「茎が通常よりも長く伸びている」「光の方向へ傾いている」「株元がぐらついている」といった様子も含めて判断する必要があります。
また、徒長そのものは病気の名前ではありません。
ただし、茎が細長く弱い苗は倒れやすくなりますし、過湿などの好ましくない環境が重なれば、立枯病など別のトラブルが起こりやすくなることもあります。
一度長く伸びてしまった部分が、あとから縮んで元の短さに戻ることはありません。
ただ、徒長が軽い場合は、その後の光や温度、水分などの環境を改善することで、新しく伸びる部分をより丈夫に育てられる可能性があります。
苗が徒長する主な原因
徒長の主因と助長要因はイラストの通りです。

徒長は、一つの原因だけで起こるとは限りません。
光、温度、苗同士の間隔、水分、肥料など、いくつかの条件が重なって起こることがあります。
徒長の主因としては「光不足・高温・密植」の3つ、があります。これらの環境のなかで、水やりのしすぎによる「過湿」・肥料の与えすぎによる「窒素過多」になることでひょろひょろ苗になってしまいます。
なお、過湿や肥料過多についても、園芸資料によっては徒長の「原因」として挙げられています。
ここでは原因を完全に分けるという意味ではなく、初心者でも優先順位を理解しやすいように整理しています。
光不足
徒長を考えるときに、まず確認したいのが光不足です。
発芽した苗に十分な光が届かないと、苗は光を求めるように茎を長く伸ばします。
窓際などでも、季節や天候、窓の向きによっては苗にとって十分な光量が得られないことがあります。
特に注意したいのが、発芽するまで容器を暗い場所や室内に置き、そのまま発芽後も光の少ない環境で管理してしまうことです。
種が発芽するときに必要な光の条件と、発芽したあとの苗が成長するために必要な光は別に考える必要があります。
発芽後は、その野菜に合った十分な光を確保することが大切です。
高温
発芽後に必要以上に高い温度で管理を続けることも、苗が細長く伸びる原因になります。
特に夜間も高温が続くような環境では、苗の伸長が進みやすくなることがあります。
ここで注意したいのは、「何℃なら徒長しない」という共通の温度があるわけではないことです。
ブロッコリーのような比較的涼しい環境を好む野菜と、ナスやキュウリのような高温を好む野菜では適した温度が異なります。
発芽までは高めの温度を必要とする野菜でも、発芽後は育苗に適した温度へ切り替える必要があります。
種袋や品種ごとの栽培情報を確認し、発芽適温と育苗適温を同じものとして考えないことが大切です。
密植・間引きの遅れ
種をたくさんまき、芽が密集した状態を長く続けることも徒長につながります。
苗同士の距離が近いと、互いに光を奪い合うようになります。
葉が重なって光が届きにくくなるだけでなく、苗同士が競うように上へ伸び、細長い苗になりやすくなります。
小松菜や水菜のように密に発芽しやすい野菜では、間引きを後回しにすると短期間でも混み合ってしまいます。
もったいないと感じても、適切な時期に間引いて光が届く空間を作ることが、丈夫な苗を育てるためには大切です。
水のやりすぎなどによる過湿
苗を乾燥させたくない気持ちから、土がまだ十分湿っているのに毎日水を与えてしまうことがあります。
しかし、常に用土がびしょびしょの状態になるほどの過湿は避けたいところです。

仕事が遅くなるため、特に夏の猛暑の時期は昼間の水切れを心配して、たくさん水やりしてしまいます。
過剰な水分は徒長を促す要因になるだけでなく、用土の中の酸素が不足して根の生育を悪くする原因にもなります。
ただし、「徒長させないために水を極端に減らす」という意味ではありません。
小さな苗は乾燥にも弱いため、用土の乾き具合を確認しながら必要な水分を与えることが基本になります。
肥料の与えすぎ
早く大きくしたいからといって、苗に必要以上の肥料を与えるのも逆効果になることがあります。
特に窒素分が多すぎると、茎や葉の成長が過剰になり、軟らかく伸びた状態になりやすくなります。
市販の培養土には、あらかじめ肥料が含まれている商品もあります。
育苗中に追加で肥料を与える場合は、「早く大きくする」ことよりも、その土や野菜に必要な量を守ることを優先した方がよさそうです。
徒長を防ぐための対策
徒長を防ぐためには、先ほどの説明と逆の環境を作ることで徒長しにくくなります。

徒長対策で大切なのは、徒長してから元に戻そうとするより、発芽直後から徒長しにくい環境を作ることです。
発芽したら十分な光を確保する
まず優先したいのが光です。
発芽を確認したら、できるだけ早く、その野菜に適した明るい環境で育てます。
室内育苗の場合は、見た目には明るい窓辺でも苗にとって光量が不足する場合があります。
苗が光の方向へ大きく傾いたり、茎ばかり伸び始めたりした場合は、光環境を見直すサインと考えます。
ただし、室内で育てた苗をいきなり真夏の強い直射日光や強風にさらすと、葉焼けやしおれを起こすことがあります。
室内から屋外へ移す場合は、苗の状態を見ながら徐々に環境へ慣らします。
発芽後の温度を見直す
発芽のために高い温度で管理していた場合は、発芽後も同じ温度で育て続けないようにします。
適温は野菜によって異なるため一律には決められませんが、育てている野菜の育苗適温を確認し、必要以上の高温、特に高い夜温が続かないよう注意します。
混み合う前に間引く
発芽がそろったあとは、葉が重なって混み合う前に段階的に間引いていきます。
苗同士の間隔を確保すると、それぞれの葉に光が届きやすくなり、風通しも改善します。
間引く時期や最終的な株間は野菜によって異なるため、それぞれの栽培方法に合わせます。
水分を適切に管理する
水やりは「毎日必ず○回」と決めるより、土の状態を確認して判断する方が安全です。
発芽直後は乾燥させないことも重要ですが、発芽後も常に土が過湿な状態になるのは避けます。
水やりをするときは必要な量を与え、その後は用土の乾き具合を観察します。
肥料を与えすぎない
苗が細いからといって、肥料不足と決めつけて追肥するのは避けた方がよさそうです。
徒長している苗へさらに多くの肥料を与えると、茎葉の伸長を助長してしまう場合があります。
まずは光、温度、密植、水分などの環境を確認し、肥料は使用している培養土や肥料の表示に沿って適量を与えます。
風通しも確保する
風通しのよい環境で育てることも、苗を健全に育てるために大切です。
植物には、風や軽い接触などの機械的な刺激によって伸長が抑えられる反応もあります。
ただし、これは光不足などを解消する代わりになるものではありません。
細い幼苗を強くこすったり、無理に曲げたりする必要もありません。
徒長対策の優先順位としては、まず光、温度、密植、水分、肥料など基本的な育苗環境を整え、そのうえで風通しを確保すると考えるのがよさそうです。
徒長してしまった苗はどうする?
一度徒長して長く伸びた茎を、元の短い状態へ戻すことはできません。
そのため、徒長してしまったあとは「治す」というより、これ以上の徒長をできるだけ抑え、その後の生育を立て直すことを考えます。
まず徒長した原因を見直す
最初に行いたいのは、光不足、高温、密植、過湿、肥料過多など、徒長につながった可能性のある環境を見直すことです。
光不足のまま土寄せをしたり支柱で支えたりしても、原因そのものが改善されなければ新しく伸びる部分も再び徒長する可能性があります。
混み合っている苗を間引く
複数の苗が密集している場合は、まず間引いて苗同士の競合を減らします。
その際は、茎が極端に細いもの、著しく曲がっているもの、生育が明らかに遅れているものなどを優先して取り除き、比較的茎がしっかりした苗を残します。
倒れやすい苗は必要に応じて土寄せする
今回、直まきした水菜・小松菜・ブロッコリーでは、徒長して倒れやすくなった苗の株元へ土を寄せ、支えることにしました。
土寄せには株元のぐらつきを抑える効果があります。
ただし、土寄せそのものが徒長を治すわけではありません。
あくまでも倒れやすい苗を支えるための補助として行います。
また、徒長した茎をすべて土の中へ埋めればよいというわけでもありません。
一般的な移植苗は元と同程度の深さで植えることが基本で、トマトのように茎から発根しやすく深植えできる野菜もありますが、すべての野菜に同じ方法を使えるわけではありません。
そのため、深植えをする場合は、それぞれの野菜で深植えが可能か確認してから行う方が安全です。
徒長がひどい場合は、まき直しも選択肢
軽い徒長であれば、その後の環境を改善しながら育て続けられる場合があります。
一方で、幼軸が極端に細く長く伸びて自力で立てない、根元が弱っている、その後の生育がほとんど進まないといった場合は、無理に育て続けるより、種をまき直した方が結果的に早いこともあります。
特に栽培適期にまだ余裕がある野菜なら、徒長苗を育て直す時間と、まき直して丈夫な苗を作る時間を比べて判断したいところです。
なお、苗が倒れている場合でも、株元が水っぽくくびれていたり、茶色く変色して腐ったようになっていたりする場合は、単なる徒長ではなく立枯病など別の問題も考える必要があります。
実際に徒長した水菜・小松菜・ブロッコリーを育ててみる
今回、7月下旬に種をまいた水菜・小松菜・ブロッコリーは、ほぼすべての苗が細長く伸び、倒れやすい状態になってしまいました。

過去に栽培したラディッシュでも同じような状態になったことがありましたが、当時は「なぜ芽がひょろひょろになるのか」まで詳しく調べていませんでした。
今回あらためて調べてみると、光不足、高温、密植、過湿、肥料など、徒長には複数の要因が関係することが分かりました。
ただし、今回の苗について「これが原因だった」と一つに断定することはできません。
栽培中の光量や地温、用土の水分量などを細かく測定していたわけではないためです。
振り返ってみると、真夏の高温期に育てていたことや、発芽後に苗が混み合っていたことなど、見直せる点はいくつかありました。
今後は、発芽した直後から光、温度、間引き、水分管理をより意識して育ててみたいと思います。
今回はすぐにまき直すのではなく、間引きと土寄せを行い、この徒長した苗をそのまま育ててみることにしました。
徒長してしまった苗が、その後どこまで生育できるのか。
水菜・小松菜・ブロッコリーそれぞれの様子を観察し、最終的に収穫まで育てられたのかもこの記事へ追記していく予定です。
成功した場合だけでなく、うまく育たなかった場合も含めて記録を残したいと思います。
まとめ|徒長を理解して丈夫な苗を育てたい
今回、実際に水菜・小松菜・ブロッコリーを徒長させてしまったことで、種を発芽させるだけでなく、その後に丈夫な苗へ育てることの難しさを改めて感じました。
徒長を防ぐには、特に十分な光を確保することが重要です。
さらに、野菜に合った温度で育てること、苗を密集させないこと、過湿を避けること、肥料を与えすぎないことなど、いくつかの管理を組み合わせる必要があります。
そして、すでに徒長してしまった場合は、伸びた茎を元に戻そうとするのではなく、原因となった環境を改善し、必要に応じて間引きや土寄せを行い、徒長がひどい場合にはまき直しも検討します。
農業には「苗半作(なえはんさく)」という言葉があり、苗作り中の管理が、その後の生育を大きく左右するといわれています。
今回の失敗を通して、私も徒長について理解し、丈夫な苗を作れるようになることが、プランター栽培を上達するための大切な一歩だと感じました。
光、水、温度、株間など、苗の様子を見ながら一つずつ管理できるようになれば、今までより失敗も減り、プランター栽培がさらに上手く、そして楽しくなりそうです。
